中学受験の算数において、多くのお子様が壁にぶつかりやすいのが「図形問題」です。特に難関校で出題される図形問題は、一見すると「情報が少なすぎて絶対に解けない!」と思わせるような仕掛けが施されています。

今回は、私のYouTubeチャンネルでも非常に反響の大きかった「難関校の平行四辺形の面積問題」を取り上げます。お子様が図形問題に行き詰まった際、保護者の方がどのように声かけをし、ヒントを出せばよいのか。そのヒントとなる「図形への2つのアプローチ」を分かりやすく解説していきます。

与えられた情報はたった2つ!直感に反する図形問題

まずは、どのような問題なのか、頭の中で図形をイメージしながら読んでみてください。(実際にお子様と一緒に紙に描いてみるのもおすすめです)

大きな「平行四辺形ABCD」があります。この図形の中に、辺ABと平行な直線(EF)と、辺ADと平行な直線(GH)をそれぞれ1本ずつ引きます。この2つの直線の交点を「I」とします。

これによって、大きな平行四辺形の中には、十字に区切られたように「4つの小さな平行四辺形」ができることになります。

この問題で分かっている面積の情報は、たったの2つだけです。

1つ目は、左下にある小さな平行四辺形の面積が「8㎠」であること。
2つ目は、その斜め向かいにある右上の小さな平行四辺形の面積が「2㎠」であること。

この状態で求めなければならないのは、交点Iと、大きな平行四辺形の頂点を結んでできる「特定の三角形」の面積です。

底辺も高さも分からない状況でどう考えるか?

図形の面積を求める基本は「底辺×高さ」などの公式を使うことです。しかし、この問題では辺の長さも、全体の面積すらも分かりません。

このような「圧倒的に情報が足りない問題」に出会ったとき、算数が得意な子はどのように頭を使っているのでしょうか。具体的な2つの解法を見ていきましょう。

解法①:分からない部分は「記号」に置き換えて魔法のように消す!

図形問題の鉄則の1つに、「全体の面積から不要な部分を引き算する」という考え方があります。

ステップ1:未知の面積を記号で置く

面積が分かっていない残りの2つの小さな平行四辺形(左上と右下)について、それぞれの面積の「半分」を「あ」と「い」という記号で置いてみます。平行四辺形は対角線で区切るとぴったり同じ面積の三角形が2つできる性質を利用するわけです。

ステップ2:全体の面積を式で表す

大きな平行四辺形全体の面積:

8 + 2 + あ×2 + い×2 = 10 + あ2つ + い2つ

全体の「半分」に圧縮すると:

5 + あ + い

ステップ3:引き算で記号が消える!

求めたい三角形の面積は、この「半分の面積」から、不要な部分である「あ」「い」「2㎠の部分」を引き算することで導き出せます。

(5 + あ + い)-(あ + い + 2)

お気づきでしょうか? なんと、分からないからとりあえず置いてみた「あ」と「い」が、引き算によって相殺され、魔法のように消えてしまうのです。

残った計算は

5 - 2 = 3㎠

分からない部分があっても立ち止まらず、「とりあえず記号で置いて式を作ってみる」という一歩を踏み出せるかどうかが、難関校を突破する鍵になります。

解法②:図形の重なりと「面積の差」に注目する本質的アプローチ

記号が消えて答えが出るのも痛快ですが、「たまたま上手く消えただけでは?」と疑問に思うお子様もいるかもしれません。そこで、さらに図形の本質に迫るもう一つの見方をご紹介します。

それは、「ある基準に対して、面積が増えた状態と減った状態の『差』に注目する」というアプローチです。

「足した形」と「引いた形」を比べる

◆ 半分の面積に、求めたい三角形(★)を「足した」形
→ この形は「8㎠」の平行四辺形に、隣接する不要な部分(あ と い)をくっつけた形と同じ面積になります。

◆ 半分の面積から、求めたい三角形(★)を「引いた」形
→ 逆に、「2㎠」の平行四辺形に、全く同じ不要な部分(あ と い)をくっつけた形と同じ面積になります。

この2つの状態を見比べてみましょう。どちらにも共通して「あ」と「い」という同じパーツが含まれています。

つまり、この2つの状態の「純粋な面積の差」は、求めたい三角形(★)の「2個分」になることが分かります。

面積の差:8 - 2 = 6㎠
★の2個分なので

6 ÷ 2 = 3㎠

図形の共通部分を見抜き、その「差」を使って不要な部分を打ち消すという考え方は、難関校の図形問題で非常によく使われる、より本質的で美しい解法です。

保護者の方へ:難関校が求めている「思考力」とは?

こうした問題を前にしてお子様の手が止まってしまったとき、「まずは底辺を探しなさい」といった公式に当てはめるアドバイスは逆効果になってしまうことがあります。

難関校が求めているのは、公式を暗記していることではなく、「分からないなりに手を動かし、図形同士の関係性やルールを見つけ出す力(思考力)」です。

保護者の方は、こんな声かけを試してみてください:

🗣「分からない面積を『あ』って置いてみたら、全体はどう表せるかな?」
🗣「この図形とこの図形、重なっている部分はどこだろう?」

こうした視点を変えるための問いかけが、お子様の「考える力」を引き出します。

まとめ:算数の本質を楽しく学ぼう

一見すると情報不足で解けそうにない難問も、アプローチを変えることでスルスルと謎が解けていく。これが算数、特に図形問題の最大の醍醐味です。

今回の解説では文章で図形を表現しましたが、「実際に図形に線を書き込みながら、面積が移動していく様子を視覚的に見たい!」という方は、ぜひ上の動画をご覧ください。お子様と一緒に「あ、ここで消えるのか!」と納得の声を上げていただければ嬉しいです。

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